第1種衛生管理者 労働衛生 まとめ②

有害物質による疾病

ここでは各有害物質について過去問で出た記述を挙げていきたいと思います。

一酸化炭素

無色・無臭の気体である

炭素を含有する物が不完全燃焼した際に発生する

エンジンの排気ガス、たばこの煙などに含まれる

一酸化炭素中毒は、血液中のヘモグロビンと一酸化炭素が強く結合し、体内の各組織が酸素欠乏状態を起こすことにより発生する

一酸化炭素中毒の後遺症として、健忘やパーキンソン症状がみられることがある

 

有機溶剤

有機溶剤の多くは、揮発性が高く、その蒸気は空気より重い

一般的に脂溶性を有し、脳などの神経系に取り込まれやすい

■健康障害

1,2-ジクロロプロパン ⇒ 肝臓及び腎臓の障害、長期間の高濃度ばく露により胆管がん

メタノール ⇒ 視神経障害

二硫化炭素 ⇒ せん妄、精神障害、網膜変化を伴う脳血管障害

酢酸メチル・・・視力低下、視野狭窄

n- ヘキサン・・・多発性神経炎

ベンゼン・・・再生不良性貧血などの造血器障害

■代謝物

トルエン ⇒ 尿中の馬尿酸(飲食物の安息香酸の量で増加する)

キシレン ⇒ 尿中のメチル馬尿酸

N,N-ジメチルホルムアミド ⇒ 尿中の N-メチルホルムアミド

テトラクロロエチレン ⇒ 尿中トリクロル酢酸又は総三塩化物

粉じん作業

(定義)

じん肺法第2条(定義) 

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 じん肺 粉じんを吸入することによつて肺に生じた線維増殖性変化を主体とする疾病をいう。

② 合併症 じん肺と合併した肺結核その他のじん肺の進展経過に応じてじん肺と密接な関係があると認められる疾病をいう。

 粉じん作業 当該作業に従事する労働者がじん肺にかかるおそれがあると認められる作業をいう。

 

じん肺則第1条(合併症) 

じん肺法に定める合併症は、じん肺管理区分が管理2又は管理3と決定された者に係るじん肺と合併した次に掲げる疾病とする。

肺結核結核性胸膜炎続発性気管支炎続発性気管支拡張症続発性気胸⑥原発性肺がん

■じん肺を引き起こす起因物質

溶接工肺は、溶接の際に発生する酸化鉄ヒュームのばく露によって発症するじん肺である

ヒュームの一次粒子の粒径は1μm以下である。(一次粒子とは一粒のことと考えてもらえばよい。一粒で浮遊する場合もあれば、まとまって二次粒子として浮遊する場合もある)

石綿により胸膜肥厚や胸膜中皮腫が発生する。

※試験には出ませんが、石綿肺の読み方は「せきめんはい」です。

金属類

粉状のニッケル化合物・・・生殖毒性、皮膚感作性、発がん性

鉛中毒・・・貧血、末梢神経障害、腹部の疝痛

クロム酸・・・鼻中隔穿孔、肺がん。

マンガン・・・精神症状、歩行障害、発語障害などパーキンソン病に似た症状

ヒ素・・・角化症、黒皮症などの皮膚障害、末梢神経障害、鼻中隔穿孔などの障害

インジウム化合物・・・間質性肺炎、ヒトに対する発がん性

金属水銀中毒・・・感情不安定、幻覚などの精神障害、手指の震え

コバルト及びその無機化合物・・・接触皮膚炎、気管支ぜんそく

カドミウム・・・上気道炎、肺炎、腎機能障害

ベリリウム・・・急性中毒では呼吸器症状、慢性中毒ではベリリウム肺と呼ばれる肺肉芽腫

※金属熱・・・亜鉛や銅のヒュームや酸化亜鉛などを吸入して数時間後に、関節痛・悪寒・発熱などの症状を発症し、数時間後に発汗とともに解熱し、多少の疲労感を残して回復する。金属加工の熱による体の不調ではない。

電磁波

電磁波とは、電界(電場)と磁界(磁場)が相互作用しながら空間を伝播する波のこと。波長が短くなる(周波数が高くなる)ほど、電磁波のエネルギーは高くなる。

環境省_電磁波の仲間 (env.go.jp) より引用

●可視光線は波長が約400~760nm領域の電磁波である。

青色の波長  〈  赤色の波長 

●レーザーの定義(レーザー光線による障害防止対策要綱より)

特定の物質に人工的に光や放電などの強いエネルギーを与えて励起させ、それが元の状態に戻るときに発生する電磁波を制御された誘導放射の過程により増幅させたものをいう。レーザー光線は、180nm から 1mm までの波長域にあり、単一波長で位相のそろった指向性の強いものである。

●電磁波と障害

赤外線 ⇒ 白内障

紫外線 ⇒ 電光性眼炎

マイクロ波 ⇒ 組織壊死

レーザー光線 ⇒ 網膜火傷

エックス線 ⇒ 放射線宿酔

電離放射線

環境省_電離放射線の種類 (env.go.jp) より引用

X線とγ線はエネルギーや波長によって分けられるものではなく、発生原因によって分けられているものである。

 

 

α、β、γ線の中で、透過両区が最も強いものはγ線やx線である。

 

【確定的影響】

これ以下なら影響が生じない、これ以上なら影響が生じるという「しきい線量」が存在する。しきい線量を超えると、一度にたくさんの細胞死や変性が起こり、影響の発生率は急激に増加する。

【確率的影響】

しきい線量はないと仮定されてい。この仮定に基づくと理論上どんなに低い線量でも影響が発生する確率はゼロではないことになる。

 

 

【放射線宿酔】

全身、あるいは身体の広い範囲に比較的短時間に高い線量の電離放射線を被ばくした場合に起こる吐き気、嘔吐、下痢などの胃腸症状および全身倦怠感。

有害要因による健康障害

振動障害

振動障害の詳細についてはパンフレット、振動障害予防のために(厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署)を参照ください。

振動は二つに分けられる

①支持構造を通して人体の全身に伝えられる全身振動

 トラクター、フォークリフト、トラックなど  

 障害と関連するのは2~100Hz関節痛などの筋骨格系障害がみられる。

 

②身体の特定の部位に局所的に作用する局所振動

 チェンソー、電動ハンマーなどの手持ち振動工具

 障害と関連するのは8~1,500Hzでレイノー現象などの末梢循環障害や手指のしびれ感などの末梢神経障害がみられる。

情報機器作業

ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度を500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度を300ルクス以上とする。

低温下

●低体温症

低温下の作業で全身が冷やされ、体の中心部の温度が 35 ℃程度以下に低下した状態をいい、意識消失、筋の硬直などの症状がみられる。

●凍瘡(しもやけ)

繰り返す寒冷刺激によって、血液の循環が悪くなることで起こる。手足の指や耳などの体の末梢部分では特に細い血管が収縮・うっ血しやすく、その部分に多く発症する。

気温が4~5℃、1日のうちの寒暖差が10℃前後になると発症しやすくなるとされ、真冬よりも初冬や初春に多いのが特徴。

●凍傷

からだの一部分が寒冷により極端に冷やされ、皮膚・皮下組織、さらには筋肉や骨までもが傷害されるのが凍傷。発生しやすいのは露出している頭部や手足(四肢)で、手よりは足のほうに多い傾向がある。通常、-7℃以下の冷気に3時間以上さらされると、凍傷が発生する。

異常気圧

●減圧症

潜函作業者や潜水作業者などに発症するもので、高圧下作業からの減圧に伴い、血液中や組織中に溶け込んでいた窒素の気泡化が関与して発生する。

■騒音障害

騒音障害の詳細について騒音障害防止のためのガイドラインを参照ください。

 

●デシベルについて

デシベルというのは電気の分野で電力伝送減衰度合い(=比率)を表すために用いられていた。

それを用いて音のレベルをdB(デシベル)で表す。

  音のレベルの公式

  L(B) = log(A/A0)    

  A:観測値  A0:基準値

この時のLをベル(B)と呼ぶが、そのままでは値が大きすぎるので1/10を表すd(デシ)を付けてdBが用いられる。

そのためdB表記する場合、デシベル(L)は下記のようになる。

L(dB) = 10log(A/A0)

電力と同じく、電力(音のエネルギー)は電圧(音圧)の2乗に比例するので

  音圧レベルの公式

  Lp(dB) = 10log(p2/p02 = 20log(p/p0

  p:観測値(Pa)   p0:基準値(Pa)  

  音圧レベルの基準値としては、人間が聴くことができる最も小さな音圧(20 µPa)を用いる

と示すことができる。

 

●振動の周波数について

ヒトが感じることのできる音の周波数の範囲は、20 Hz から 20,000 Hz程度。

会話領域は 500 Hz から 2,000 Hz 程度である。

 

●等価騒音レベル

騒音レベルが時間と共に不規則に大幅に変動している場合、ある時間内で変動する騒音レベルのエネルギー(総曝露量)を時間平均したもの。

一般的に、等価騒音レベルの算出には騒音計の周波数補正回路の A 特性を通したレベルが用いられ、これを明記したい場合には LAeq と表記される。

 

●振動の身体に対する影響

騒音へのばく露により、ストレス反応である副腎皮質ホルモンの分泌の増加が認められる。

騒音性難聴は、内耳の障害による感音性難聴である。

騒音性難聴の初期に認められる4,000 Hz 付近の音から始まる聴力低下の型をc5 dipという。

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