作業環境測定士 放射性物質 まとめ②

放射性物質の測定

BF3比例計数管と3He比例計数管は熱中性子を測定するのに適している。

 

エネルギーの校正に用いられる主な標準線源

過去γ線しか出題されていないようです。

α線測定

プルトニウムの空気中濃度測定はサンプリング法とモニタリング法がある。

サンプリング法

プルトニウムの空気中濃度限度は、ラドンやトロンなどの自然放射能濃度よりも低いことから、自然放射能の影響を抑える様々な工夫がなされている。

α線ダストモニタリングでは、粒子のもぐり込みを避けるため、表面捕集性能の良いろ紙を用いる。

全α線放射能計測の場合はZnS(Ag)シンチレーション検出器、核種同定を行う場合はSi半導体検出器を用いることが一般的である。

ラドンとトロンの崩壊生成物による影響を抑えるには、下記の2つの方法がある。

①試料採取3日後以降に全α放射能計測を行う。ラドンの半減期は3.8日。トロンの半減期は555.6秒であるので影響を少なくできる。

②α線スペクトル分析を行うことによってこれらの影響を評価し、その影響を排除する必要がある。

 

モニタリング法

濃度変化をリアルタイムに検出する。

空気中プルトニウム濃度分析で一般的なものは、空気によるα線の吸収を抑えるために真空容器内に入れた試料をSi半導体検出器で測定するα線スペクトル分析である。

Si半導体検出器によるαスペクトル分析は、減圧容器内で239Pu からの5.1 MeV α線をラドンやトロンの崩壊生成物からのα線とエネルギー弁別測定する。

α線のエネルギーはそれぞれ次の通りである。239Puは5.1MeV、ラドンは5.49MeV、トロンは6.29MeV

 

β線測定

 

γ線測定

エネルギー校正・・・スぺクトルのチャンネル数(ch)とエネルギー(keV)の関係を求め、ピークを正確に核種判定に使えるようにする。

ベースライン面積の差し引き・・・ピークの下にはバックグラウンドや散乱成分が含まれるため、それを除いて正味のピークカウント(N)を算出する。

サムピーク補正・・・「2つのγ線が同時に検出器に入ることで、足し算されたようなピークが出てしまう」現象に対する補正。

計数効率の評価・・・検出器が実際に放出されたγ線のうち、どれだけを正しくカウントしたかを定量的に評価する。

放射能減衰の補正・・・試料採取後、測定までの時間が経過する間に放射能が減衰するため、採取時点での放射能を求めるために補正する。

検出器及び試料の遮へい・・・外部からの不要な放射線の影響を減らし、感度を高める。(通常は鉛製の遮蔽容器を使用)

※γ線測定では自己吸収補正は極めて小さく、無視できる。

 

ガス状放射性物質の放射能測定

【過去に出題された問題】(正解に変換済み)

・端窓型GM 計数管を使用したサンプラ型ガスモニタは、ガス状β線放出核種の測定に使用される。

・通気型電離箱の検出下限濃度は、電離箱の容積に依存する。

・捕集用ガス容器を用いた直接捕集方法による測定では、ガス容器は原則として容積1000 cm3以上のものを用いる。

・ガス捕集用電離箱の電離効率は、β線の最大エネルギーにほぼ反比例する。

・捕集用ガス容器に試料空気を直接採取する方式は、41Ar や85Kr などの測定に用いられる。

・粒子状放射性物質の混入が測定対象核種の濃度の1/10以下であることが明らかなときは、ろ過を省略してもよい。

・ガス捕集用電離箱において、α線に対する電離効率は、β線に対する電離効率より高い。

・ガス捕集用電離箱の動作電圧は、飽和電離電流となるように設定する。

・通気型の電離箱の測定値には、天然のラドンとその子孫核種の影響が含まれる。

・ラドン・トロンは、放射性アルゴンよりも電離箱内壁の放射能汚染を生じやすい。

 

液体シンチレーション検出器

【過去に出題された問題】(正解に変換済み)

14C のβ線の測定に適している。

3H 及び14C の測定ではβ線スペクトルを複数のエネルギー領域に分けて測定し、試料の計数効率を求めることができる。

3H、14C 等の低エネルギーβ核種の測定に適している。

・水溶液試料の放射能測定は、乳化剤を加えた有機シンチレータ溶液に試料を乳化させて行う。

・シンチレータの溶媒には、通常、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素が用いられる。

・試料からの放射線で生じるシンチレーション光を光電子増倍管を用いて測定する。

・一般に、低エネルギーβ線よりも高エネルギーβ線に対して計数効率が高い。

・化学発光は、放射能の過大評価をもたらすことがある。

・試料の化学成分は計数効率に影響する。

・クエンチングは、放射能の過小評価をもたらすことがある。

・ 不溶性試料は、放射能測定の精度を下げる。

・クエンチングには、化学クエンチングや色クエンチング等がある。

・クエンチングの効果は、外部標準線源によって補正することができる。

・外部γ線標準線源を用いて試料の計数効率を求めることができる。

 

採取、定量、評価のプロセス

捕集方法一覧

※検出器は過去に出題された検出器のみ記載

【捕集用電離箱】

固体捕集や液体捕集による捕集が困難な場合に使用される。

133Xe

14CO2

41Ar ⇒振動容量電位計

HTO ⇒微小電流計

 

【液体捕集】

14CO2(アルカリ溶液)

 

【固体捕集】

CH131I (活性炭カードリッジ) ⇒NaI(Tl)シンチレーション検出器、Ge半導体検出器

トリチウム化水蒸気(シリカゲル)

 

【ろ過捕集】

60Co3O4(セルロース・ガラス系ろ紙)⇒GM検出器

239PuO2(セルロース・ガラス系ろ紙)⇒Si半導体検出器

H131IO4(活性炭素繊維フィルタ)

 

【過去に出題された問題】(正解に変換済み)

【言葉の定義】

・表面捕集率とは、測定対象となるα線の平均飛程以内のろ紙表面部分に捕集された粉じんの、全捕集粉じんに対する割合である。

 

【全般的な測定の方法】

・γ線や中性子線のような外部放射線の測定点を決める際は、前回と同一の測定点を選ぶことが望ましい。

・γ線用サーベイメータは、センサ部分を地上約1 m 程度の高さに保ち、モニタ対象区域を移動して測定する。

・表面汚染測定における、ろ紙によるふき取り面積は10 cm × 10 cm 程度が基本であるが、低レベルの汚染を見つけるためには、より広い面積をふき取るのが効果的である。

・表面汚染用サーベイメータは、測定対象物の表面直近から1 cm 程度以内の距離を保ちながら移動させ、計数率の変化を調べる。

・各単位作業場所で、1箇所以上の測定を行う。

・測定点の高さは、通常、作業床面上約1 mとする。

・中性子線が含まれる場合は、中性子線の測定にγ線の線量当量率測定も加え、それぞれが最も高くなりそうな場所で測定する。

・個人線量計は、放射線入射窓を外側にして、男性は胸部に着用する。

・GM 管式サーベイメータで保護キャップやシャッターが付属している測定器で周辺線量当量率を測定する際は、保護キャップを付けたまま、あるいはシャッターが閉じた状態で測定する。

・吸引する試料空気量は、計測器の検出感度、捕集効率を考慮して、検出下限濃度が濃度限度の1 / 10 を超えないように決める。

 

【特殊なルール】

・ 管理区域境界の測定において、境界上での測定が困難な場合には、境界における線量当量を下回ることなくこれを推定できる箇所を選択してよい。

・性状の異なる放射性物質が混在する場合は、複数の測定法を併用する必要があるが、ある測定法による濃度限度比が、他の測定法による濃度限度比の総和の1/10以下であることが明らかな場合は、その測定法を省略してよい。

・取扱う核種が明らかで、かつ複数の場合は、濃度限度の値が最も小さい核種が全割合を示すものとして空気中濃度の測定結果を取り扱ってよい。

 

【サンプリングの種類】

・セントラルサンプリングは、放射性物質取扱室が多数ある場合、サンプリング配管を通じて各室の試料空気を1箇所に集めて採取する方式であるが、高濃度汚染のおそれがある部屋が含まれる場合には適用すべきではない。

・ローカルサンプリングは、局所的に発生する空気汚染の検出及び室内の空気中放射性物質の濃度分布を知ることを目的とする。

・スポットサンプリングは、空気汚染の発生が予想される作業もしくは発生源となる箇所に着目し、作業方法や風向きを考慮して試料空気を採取する。

・パーソナルサンプリングは、作業者が吸入する空気中の濃度を知るため、作業者の呼吸域の高さで、携帯型の個人サンプラでモニタする。

・ゼネラルサンプリングは、放射性物質取扱室全体についての空気汚染の検出を目的とし、空気汚染発生源の位置を確認するためのものではない。

 

【各種サンプリング方法】

■直接捕集法

・空気を直接捕集容器や電離箱などで採取する方法を直接捕集法と呼び、放射性ガスの採取・測定に適している。

・ガスモニタには、捕集用ガス容器に放射線検出器を備え、ガス容器内に試料空気を流しながら、放射能を連続計測するものがある。

・捕集用ガス容器に試料空気を直接採取する方式は、41Ar や85Kr などの測定に用いられる。

 

■固体捕集法

・ 固体捕集法によるトリチウムの測定には、シリカゲルが吸着剤として用いられる。

・ 放射性ヨウ素の捕集には、活性炭含浸ろ紙、活性炭カートリッジなどが用いられる。

・ハロゲン系の気体状放射性物質の捕集には、活性炭含浸ろ紙、活性炭カートリッジなどが用いられる。

・固体捕集法では、測定対象の放射性物質に応じて適当な固体捕集剤を用いることによってその放射性物質を捕集する。

 

■ろ過捕集法

・ろ過捕集法に用いるろ紙には、0.3 μm の粒子を95 % 以上捕集する能力のあるものが用いられる。

・低エネルギーβ線を放出する核種を捕集対象とするときには、表面捕集率の高いろ紙の使用が望ましい。

 

濃度の計算

 

検出下限計数率の計算

半減期の計算

トリチウムの測定

トリチウムは通常は空気中で水蒸気と反応してトリチウム化水蒸気として存在する。(ろ過捕集はできない)

トリチウムはβ線のみを放出する。

捕集方法と検出器(計測器)は以下の通りである。

コールドトラップによる冷却濃縮捕集 ⇒ 液体シンチレーション検出器

シリカゲル、モレキュラーシーブを用いた固体捕集 ⇒ 液体シンチレーション検出器

水による液体捕集 ⇒ 液体シンチレーション検出器

ガス捕集用電離箱による直接捕集 ⇒ 振動容量電位計

【過去に出題された問題】(正解に変換済み)

・トリチウム化水蒸気のシリカゲルによる捕集は、1か月程度の長期の連続サンプリングが可能である。

・ガス状トリチウムは、酸化させることにより、トリチウム化水蒸気と同様な測定が可能である。

・ガス捕集用電離箱では、濃度限度程度の濃度を適時チェックすることができる。

・捕集用電離箱では、半減期などの測定により他の放射性ガスとの分離測定可能である。

・通気型の電離箱式モニターでは、他の放射性ガスとの分離測定ができない。

・ガス状トリチウムは、トリチウム化水蒸気よりも電離箱内壁の放射能汚染を生じにくい。

・液体捕集法では、他の放射性ガスとの分離捕集が可能である。

・冷却凝縮捕集法では、他の放射性ガスとの分離捕集が可能である。

・固体捕集法では、他の放射性ガスとの分離捕集が可能である。

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