作業環境測定士 有機溶剤 まとめ①
過去問の一覧(パスワードの販売もしています) ⇒ https://osh-lab.com/524/
有機溶剤の物性
水への溶解度
水への溶解度順 → PDF
溶解度の問題は微妙な差の物質が出題されることは無い。
アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、セロソルブ関係、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)この5つを覚えておけば十分である。
過去に出題された物質(★は回数)
【水溶性が高い物質】
エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ) ★
【水溶性が低い物質】
沸点(蒸気圧)
飽和蒸気圧の問題は飽和蒸気圧を覚える必要は無いです。
飽和蒸気圧が低い→沸点が高い
飽和蒸気圧が高い→沸点が低い
と覚えておいてください。
理屈から覚えようとするならば、「蒸気圧=大気圧になったところが沸点。それならば飽和蒸気圧が最初から高いほうが与えるエネルギーが低くて済む→沸点が低い」となります。
丸覚えするの大変だと思いますが、主要なところは覚えておいたほうがいいです。構造式が思い浮かぶ人は何となく判ります。
①エーテルは沸点低め
②その次はベンゼン環が付いていないもの
③ベンゼン環が付いていると沸点高め
④似たような構造だったら分子量が大きいほうが沸点高い
⑤ハロゲンが付くとそこから少し高くなる(クロロ<ブロモ<ヨード<フルオロ 日本語で書くと塩化<臭化<ヨウ化<フッ化)
⑥硫酸が付くと高いかも(これは特定化学物質用のコメントです)
下の表の通り、沸点高め→蒸気圧低めです。多少の入れ替わりがありますが、沸点も蒸気圧も測定するのが難しいので、その辺は気にしないでください。
明らかに差がある物質しか出題されないことが圧倒的に多いです。(令和5年8月問1(5)を除く)
【アルコールの沸点について】
基本的にはアルコール分子間の相互作用が強くなれば沸点は高くなり、分子間の相互作用の強弱は主に二つの要素で決まると考える。
一つはヒドロキシ基の周りの立体的な混み具合で、もう一つは炭化水素部分の枝分かれの様子である。
そのため、ヒドロキシ基の周りが立体的に空いている第 1 級アルコールは水素結合を形成しやすく、沸点が高くなる。下図の炭素数が4つのブタノールの場合は第 3 級アルコールから第 2 級アルコール、第 1 級アルコールの順に沸点が高くなる。二つの第 1 級アルコールの比較では枝分かれのある方が分子間の相互作用が少なくなり、沸点が低くなる。
※ 第〇級アルコールとは・・・-OH基の付いた炭素に何個炭素が付いているか。
下の化合物で言うと、左から第1級、第1級、第2級、第3級
沸点順 → PDF
過去に出題された物質(★は回数)
【沸点が高い物質】
トルエン ★
【沸点が低い物質】
極性
比誘電率順 → PDF
過去に出題された物質(★は回数)
【極性が高い物質】
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF) ★
【極性が低い物質】
比重(密度)
比重順 → PDF
クロルと名前が付くものか、二硫化炭素が水よりも比重が高いと考えればよい。(クレゾールもそうだが、多分出題されない)
それらは全て水への溶解度がほとんどない。
流量計
流量計については作業環境測定ガイドブック「総論篇」に詳しく書かれているので、そちらを参照願いたい。
ここでは出た問題をまとめておく。
株式会社エム・システム技研のHPを一部参考にしています。
https://www.m-system.co.jp/rensai/rensai_top.htm
全般
過去に出題された問題(正解の文章に変換済み)
・経年変化により指示値に誤差を生じることがあるので、定期的に校正する必要がある。
・流量計の指示が脈動して読み取りが難しい場合は、流量計と吸引ポンプの間に空気だめを設けるとよい。
・湿式ガスメーターを用いて流量計の校正を行う場合には、湿式ガスメーターは、ポンプの下流に接続する。
(湿式ガスメーターは押し込み方式で、出口は大気解放で使用する:総論に校正方法の絵が描いてあります)
・サンプリングに用いる流量計の校正は、捕集装置を取り付けた状態で行う。
・ハイボリュームエアサンプラーは、指示される流量が、汚染により、製造時に校正した値と異なることがあるため、事前に校正する必要がある。
・校正した流量計を用いても、捕集装置の圧力損失が著しく大きいと、差圧計の値を用いた流量補正が必要な場合がある。
面積流量計
フロートメーターとも呼ばれる流量計。
面積式流量計は、テーパー管内の浮子が停止したとき、浮子とテーパー管の間隙の面積とそこを流れている流量とが比例することを利用している。
捕集装置とポンプの間に接続した面積式流量計では、捕集装置の圧力損失が大きくなるに従って、流量計の指示値は真の流量より大きくなる。
(=捕集器具を取り付けない状態で流量校正した面積式流量計を捕集器具と吸引ポンプの間に接続して捕集すると、流量計の指示流量は、実際の流量よりも大きくなる。)
石けん膜流量計
石けん膜流量計は、所定の距離を石けん膜が移動する時間を測定して流量を求めるものである。
吸引流量が1 L・min-1 以下の流量計の校正には、石けん膜流量計を用いることができる。
絞り式(オリフィス)流量計
絞り式(オリフィス)流量計は、オリフィス板の上流側と下流側との間に生じる圧力差が流量と一定の関係にあることを利用している。
ハイボリウムエアサンプラーの校正にはルーツメータによって校正された絞り式(オリフィス)流量計を用いてよい。
作業環境測定におけるオリフィス流量計とはどのようなものか判りませんので、プラントで使うような写真を載せました。
捕集方法の種類
化学物質によって捕集方法が定められている。数が多いので覚えきれないが、一度でも出題された物質は覚えておきたい。このあと紹介する捕集方法には出題された物質を書くように努めます。
有機溶剤の捕集方法 https://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-18/hor1-18-1-1-3.html
★流量と各捕集方法
低流量の捕集装置・・・無負荷時流量範囲が5L/min未満 ろ過捕集方法、液体捕集方法、固体捕集方法によって捕集する。
中流量の捕集装置・・・無負荷時流量範囲が5~100L/min ろ過捕集方法、液体捕集方法によって捕集する。
高流量の捕集装置・・・無負荷時流量範囲が100L/min以上 ろ過捕集方法によって捕集する。
固体捕集方法
全般
固体捕集層に捕集した試料は、測定対象物質の分析に適した溶媒を用いて脱着(溶媒脱着)あるいは加熱装置で加熱脱着後にガスクロマトグラフ分析などを行う。
・捕集された試料は、捕集管内で固体捕集層の未吸着部分へ移動することがある。通常は2層に分割してある捕集管の前層に試料が捕集されるが、それを保存している間に後層に試料が移動することがある。そのため、保存は出来るだけ低温に保ち、また可能な限り早く試料の分析を行う必要がある。
・一般的にはシリカゲルで捕集した場合は親水性物質、活性炭で捕集した場合は疎水性物質で脱着する。
過去に出題された問題(正解の文章に変換済み)
・固体捕集にはシリカゲル、活性炭、ポーラスポリマーなどの吸着剤が用いられる。
・捕集剤には、シリカゲル、活性炭などの吸着剤、ガスクロマトグラフ分析用のカラム充填剤が使用されるが、金属繊維を捕集剤として使用することもある。
・固体捕集- 加熱脱着- パージトラップ法では、空気中の低濃度成分の高感度分析が可能となる。
・混合有機溶剤を捕集する場合、含まれる有機溶剤の種類によっては、異なる種類の捕集管を用意し、同時に捕集することが必要になる。
シリカゲル
極性の強いガス状物質の捕集に有効。しかし水に対する吸着力が強いため、シリカゲルの水分含有量によって測定対象物質の吸着容量に大きな差を生じることがある。そのために100℃程度で約1時間加熱したシリカゲルを持ちいる。空気吸引口に測定対象物質を吸着しない脱水剤を接続して使用することがある。
シリカゲル管は、ミストの捕集には不適当である。
活性炭
一般に無極性有機溶剤などに対する吸着力が強い。活性炭にガス状物質を捕集する場合には、吸気中の水分の除去や、捕集率を高めるための冷却を行う必要はない。
活性炭の活性化は、乾燥した空気又は窒素の気流中で、約200℃での加熱、脱水により行うことができる。
活性炭管に試料空気を捕集する際は、前もって活性炭管を接続した状態で電動ポンプの流量を、石けん膜流量計で校正する。
ポーラスポリマービーズ(多孔質プラスチック)
ポーラスポリマービーズは活性炭に比べ、有機化合物蒸気に対する捕集容量は小さいが、表面が不活性なため不安定が化合物の捕集に用いても捕集管内で重合や酸化等の化学反応による変質が起こりにくいという利点がある。捕集した試料は、活性炭管に比べて加熱脱着が容易である。
フロリジル管
フロリジルを充填した捕集管で、PCBの捕集に使用する。フロリジルは粒状のケイ酸マグネシウムでPCBに優れた捕集能力を持っている。
直接捕集方法
試料空気を捕集容器内に直接採取する方法。捕集容器としては真空捕集瓶、捕集袋(バッグ)が用いられる。
洗浄は窒素又は清浄空気の送入と排気を2~3回繰り返し、分析に影響が無いよう汚染物を除去する。内面の洗浄に水や洗剤を用いると汚染される。
【捕集例】
真空捕集瓶による採取
内容量が1L以上のガラス製の捕集瓶を使用する。その内面は測定対象物質に対して不活性でなければいけない。
捕集瓶内を1.33kPa(10㎜Hg)に減圧する。
メタノールは真空捕集瓶を使用する。
コックは漏れの原因になりやすいのでグリスを付けたくなるが、グリスの使用は避ける。(汚染の原因となるため)
捕集袋による採取
捕集袋は、5 L 以上のものを用いる。
1.4-ジオキサン、ジクロロメタン、および1,1.1.-トリクロルエタン、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのセロソルブ類、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類は捕集袋を使用する。
過去に出題された問題(正解の文章に変換済み)
・使用後の捕集袋を再使用するためには、水又は洗剤で内面を十分に洗浄してはならない。
・真空捕集びんのコックには、漏れを防止するためのグリースの使用は避ける。
・ 捕集袋を再度使用する場合には、窒素又は清浄空気で内面を十分に洗浄する。
・真空捕集瓶は、1.33 kPa 以下の圧力にして使用する。
・真空捕集瓶は1 L 以上の容積のもの、捕集袋は5 L 以上のものを使用する必要がある。
・ メタノールの直接捕集では、真空捕集瓶を使用することができる。
・真空捕集瓶による試料空気の採取には、内容積が1 L 以上のガラス製の捕集瓶が用いられるが、その内面は測定対象物質に対して不活性でなければならない。
・真空捕集瓶に試料空気を採取する際の吸引空気流量は一定ではない。(最初の流量が大きく、徐々に流量が落ちていく)
液体捕集方法など
捕集液中に試料空気を通じて液体と接触させ、溶解反応等により測定対象物質を捕集する方法。
【粒子状物質の液体捕集】
試料空気を所定の捕集液中に一定の流量以上で通じ、液体と粒子との慣性衝突を利用して対象物質を捕集液中に捕集する原理を利用している
・粒径が大きいほど捕集率が高くなる。(慣性衝突を利用しているため)
【ガス、蒸気等のガス状物質の液体捕集】
試料空気を所定の捕集液中に通じて液体と接触させ、溶解作用、化学反応を利用して測定対象物質を捕集している。
液体捕集に用いられる捕集器具には小型ガス吸収管、ミゼットインピンジャー、バブラーなどがある。それぞれによって捕集率が異なるため、対象物質ごとにその捕集率を確かめておく必要がある。
・ガス状物質の捕集では、流量が大きいほど捕集率は低くなる。(流量が大きいと液体との接触時間が短いので捕集されにくくなる。)
・有機溶剤など揮発性物質の捕集では、捕集液の温度が低いほど捕集率は高くなる。
・気泡が小さいほど捕集率は高くなる。(気泡の表面で主に溶解や化学反応が起きる。そのため同じ空気の量であれば気泡が小さいほど表面積が大きくなるため捕集率が高くなる)
小型ガス吸収管
0.1~1.0L程度の試料空気を採取するのに用いる。捕集液を正確に測って3~5ml入れ、100ml/min前後の流量で試料空気を吸引する。
【捕集例】
小型バブラー
0.1~1.0L程度の試料空気を採取するのに用いる。捕集液を10ml入れ、100ml/min前後の流量で試料空気を吸引する。
小型バブラーに試料空気を捕集する際は、吸引する電動ポンプの流量を石けん膜流量計で校正する。
【捕集例】
ミゼットインピンジャーおよびバブラー
数L以上の試料空気を採取するのに用いる。ガス状物質の捕集には、一定量(10ml以上)の捕集液を入れ、吸引ポンプで1L/min前後の一定流量で試料空気を吸引する。
粒子状物質の捕集では吸引流量を3L/min前後とする。
【捕集例】
過去に出題された問題(正解の文章に変換済み)
・ ミゼットインピンジャーによる粒子状物質の捕集では、吸引流量を3 L・min-1 とする。
・ミゼットインピンジャーによる粒子状物質の捕集は、慣性衝突効果によるものである。
・インピンジャーによる粒子状物質の捕集では、流量が大きいほど捕集率は高くなる。
・ミゼットインピンジャーによる粒子の捕集では、粒径が小さいほど捕集率は低くなる。
・ ミゼットインピンジャーによるガス状物質の捕集では、吸引流量が大きいほど捕集率は低くなる
・バブラーによるガス状物質の捕集では、気泡が小さいほど捕集率は高くなる。
・小型ガス吸収管による有機溶剤など揮発性物質の捕集では、捕集液の温度が高いほど捕集率は小さくなる。
・小型ガス吸収管によるガス状物質の捕集では、流量が大きいほど捕集率は低くなる。
・ 液体捕集における捕集率は、捕集器具を2本直列につないで試料空気を吸引し、それぞれの器具に捕集された測定対象物質の量を測定することにより推定される。
・小型ガス吸収管によりキシレン(非水溶性溶剤)を液体捕集する際、捕集液には90%エタノールを用いる。
・小型ガス吸収管によりメタノール(水溶性溶剤)を液体捕集する際、捕集液には精製水を用いる。
・ミゼットインピンジャーに粒径3 ~ 5 mmのグラスビーズを入れておくと、ガス状物質の捕集率が高まるのは、試料空気と液体の接触面積が大きくなるからである。
検知管
検知管は厚生労働省のガイドブックがわかりやすいです(P47以降が特にわかり易い) PDF
●作業環境測定で検知管法が認められている有機溶剤は下記24物質である。
アセトン
イソブチルアルコール
イソプロピルアルコール
イソペンチルアルコール(別名イソアミルアルコール)
エチルエーテル
キシレン
クレゾール
クロルベンゼン
酢酸イソブチル
酢酸イソプロピル
酢酸エチル
酢酸ノルマル-ブチル
シクロヘキサノン
1,2-ジクロルエチレン(別名二塩化アセチレン)
N・N-ジメチルホルムアミド
テトラヒドロフラン
1,1,1-トリクロルエタン
トルエン
二硫化炭素
ノルマルヘキサン
2-ブタノール
メチルエチルケトン
メチルシクロヘキサノン
検知管の指示値と気圧(ガステックHPより引用)
検知管の濃度目盛は、1気圧(1013hPa)の状態で決定されています。通常は、ほとんど影響ありません。
しかし、高地(気圧の低い場所)や高気圧下の土木作業(圧気工法)など、気圧が通常とかけ離れている場所は、指示値の補正が必要となります。
真の濃度は、次式により求めます。
真の濃度=指示値×1013/測定地点の気圧(hPa)
〈例)標高934m軽井沢の標準気圧906.5hPa、 検知管の指示値18.8%の場合。
18・8〈%)×1013/906.5(hPa)=21(%)
つまり、低気圧だと指示値は真の値より小さい。高気圧だと指示値は真の値より大きいことになる。
理由は低気圧だと空気が膨張して有害物質の濃度が薄まるからである。
ガステックの資料を添付しておきますので、興味のある方はどうぞ⇒PDF
●パッシブ式検知管
個人サンプリングにはパッシブ式検知管が使われる。これは吸引ポンプを用いないで拡散現象を利用するもので、例えば、アセトンの場合、測定範囲が 5~1500ppm、測定時間が 1~10 時間となっている。
過去に出題された問題(正解の文章に変換済み)
・前処理管には、除去管、除湿管及び反応管がある。
・直読式検知管の変色層が斜めに現れたときの測定値は、変色した部分の中間値を読み取る。
・検知管の検知試薬は、測定対象物質以外の物質にも反応するものが用いられることがある。
・変色層の長さは、通気速度によって変わることがある。
・検知管に所定の空気を通気した後、時間の経過とともに着色が変化する場合があるので、濃度の読み取りは速やかに行う。
・検知管は、測定対象物質の管理濃度の10分の1の濃度を精度よく測定できるものを用いる。
・検知管の定量下限は、検知管の箱や取扱説明書等に記載されている測定範囲の下限である。
・検知管方式によるA測定の場合、1単位作業場所における採取開始から終了までの時間は、試料採取の間隔を調整することにより1時間以上になるようにする。
・検知管吸引ポンプからの漏れを防ぐため、ピストン及びシリンダー内部にグリースを塗布する。
・検知管の濃度目盛は温度20 ℃ を基準にしているため、場合によっては付属の温度補正表により読み取り値を温度補正する必要がある。
・検知管の検知限度は、変色がわずかでも認められる濃度のことである。
・検知管の変色層の長さは、有害物質の濃度に必ずしも比例しない。
・検知管の濃度目盛りは、1気圧の場合の変色層の長さとして表示されており、これより気圧が高い場合は、検知管の指示値は、真の値よりも大きい値となる。
・測定するときは、ガス採取器のハンドルを一気に引くことが重要である。
・検知管の指示値は、低気圧下では低くなる。
・一度使用した検知管は、変色していなくても再使用できない。