作業環境測定士 令和4年8月 特定化学物質
問1吸光光度分析法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 光電子増倍管は、光の強度を電気信号に変換し、増幅する。
2 試料溶液に照射する光は、単色光である。
3 試料液を透過した光の強さは、試料液の濃度に比例する。
4 ガラス製のセルは、可視部の吸収の測定に用いる。
5 着色液は、時間の経過とともに退色することがある。
解答
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(3)
【解説】
作業環境測定士 特定化学物質 まとめ① ランベルト・ベールの法則 参照
作業環境測定士 特定化学物質 まとめ① 吸光光度分析計 参照
(3)吸光度A = log10(I0/I) = ε c ℓ なので、透過光の強度は試料液の濃度に比例しない
問2シアン化水素の吸光光度分析法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 シアン化水素は、ミゼットインピンジャーを用いて、水酸化ナトリウム溶液に捕集する。
2 標準原液のシアン化物イオン濃度は、硝酸銀溶液で滴定して標定する。
3 シアン化水素を捕集した溶液は、酢酸で中和した後、発色操作を行う。
4 発色操作には、クロラミンT とピリジン-ピラゾロンを用いる。
5 発色した溶液は、赤色を呈する。
解答
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(5)
【解説】
(5)青色を呈する
問3吸光光度分析法における次の㋑から㋥までの項目のうち、検量線の傾きに関係があるものの組合せは下のうちどれか。
㋑ 光源の光の強度
㋺ セルの光路長
㋩ 発色試薬の濃度
㋥ 測定物質のモル吸光係数
1 ㋑ ㋺
2 ㋑ ㋥
3 ㋺ ㋩
4 ㋺ ㋥
5 ㋩ ㋥
解答
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(4)
【解説】
作業環境測定士 特定化学物質 まとめ① ランベルト・ベールの法則 参照
吸光度はε(モル吸光係数)、c(モル濃度)、ℓ(光路長)の積によって決まる。従ってロと二が検量線の傾きに影響する。
問4次の化学物質のうち、可視部の吸光光度分析法で定量する場合に発色操作を必要としないものはどれか。
1 アクリロニトリル
2 ペンタクロロフェノール
3 トルエンジイソシアネート
4 オーラミン
5 p- ニトロクロロベンゼン
解答
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(4)
【解説】
オーラミン、マゼンタ、p-ジメチルアミノアゾベンゼンは染料や顔料として用いられる物質である。その物質そのものに色が付いているので発色処理は必要としない。
問5試料溶液中のベンゼン濃度の測定をガスクロマトグラフ分析法で行い、ベンゼンのピーク面積4.0 × 104 を得た。この溶液4.0 mL と、ベンゼン濃度15 μg・mL-1 の標準溶液2.0 mL を混合し、同様に分析したところ、ベンゼンのピーク面積は6.0 × 104 であった。試料溶液中のベンゼン濃度として、正しい値は次のうちどれか。
1 1.0 μg・mL-1
2 2.0 μg・mL-1
3 4.0 μg・mL-1
4 6.0 μg・mL-1
5 8.0 μg・mL-1
解答
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(4)
【解説】
最初に測定した溶液のベンゼン濃度をA(μg・mL-1 )とすると。
二回目に測定したベンゼン濃度は (A × 4 + 15 × 2)/ (4+2) =(4A +30)/6
濃度とピーク面積は比例関係にあるので、次の式が成り立つ。 A : (4A +30)/6 = 4:6
6A = (16A + 120)/6
36A = 16A +120
20A = 120
A = 6
問6ガスクロマトグラフ分析法に用いられる固定相液体に関する次の記述の㋑から㋩までのに入る語句の組合せとして、適切なものは下のうちどれか。
「固定相として用いられる液体は、蒸気圧が㋑、かつ、分析対象物質を㋺し、しかも反応性や熱分解性の㋩ものが推奨される。」
解答
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(3)
【解説】
作業環境測定士 特定化学物質 まとめ② ガスクロマトグラム カラム 参照
●蒸気圧が高い(=沸点が低い)と、分析中に固定相が気化してしまう
●分離機構は用いる固定相の種類により異なり、たとえば固定相に液体を用いると、試料成分は固定相液体への溶解性の差により分離される。このような分離機構に基づくクロマトグラフィーを分配クロマトグラフィーという。
【固定相】
液体 ー 溶解性の差 ー 分配クロマトグラフィー
吸着剤 ー 吸着力の差 ー 吸着クロマトグラフィー
イオン交換体 ー イオン交換能の差 ー イオン交換クロマトグラフィ
ゲル ー ゲル細孔への浸透性の差 ー ゲルクロマトグラフィー
●反応性や熱分解性は当然低いほう良い
問7ガスクロマトグラフ分析法による環境空気中のホルムアルデヒド濃度の測定に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 ホルムアルデヒドの捕集は、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)含浸シリカゲルを充塡した捕集管が用いられる。
2 捕集後の捕集管は、冷凍又は冷蔵して保存する。
3 捕集管から抽出された試料液は、強カチオン交換樹脂に通して処理される。
4 検出器には、炎光光度検出器(FPD)が用いられる。
5 他のアルデヒド類やケトン類が、妨害物質となる場合がある。
解答
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(4)
【解説】
(4)検出器はGC-MSを使用する
問8環境空気中の酸化プロピレンのガスクロマトグラフ質量分析法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 酸化プロピレンの分子量は、58.1 である。
2 捕集には、直接捕集法又は固体捕集法を用いる。
3 固体捕集法では、球状活性炭管を用いる。
4 活性炭からの脱着には、トルエン-アセトニトリル溶液を用いる。
5 捕集後の活性炭管は、冷蔵保存し一週間以内に分析を行う。
解答
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(2)
【解説】
(2)酸化プロピレンは固体捕集法のみである
問9高速液体クロマトグラフ分析法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 分配クロマトグラフ法に用いる固定相の性質は、担体表面に存在する官能基で決まる。
2 イオン交換クロマトグラフ法では、移動相のpH やイオン強度が分離効率に大きく影響する。
3 移動相として用いる溶液は、化学的に安定で、粘度の高いものを選ぶ。
4 汎用的な分離カラムは、内径1 ~ 8 mm、長さ15 ~ 30 cm である。
5 移動相は、通常0.1 ~ 5 mL・min-1 の一定流量とする。
解答
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(3)
【解説】
作業環境測定士 特定化学物質 まとめ③ 高速液体クロマトグラム(HPLC) 参照
(3)移動相として用いる溶液は化学的に安定で、分離に必要な分配係数を有し、粘度が高すぎず、分離後の検出を妨害しないものを選ぶ
問10特定化学物質用の検知管Ⓐとマイナスの妨害を示す物質Ⓑとの組合せとして、正しいものは次のうちどれか。
解答
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(3)
【解説】
(3)以外は全てプラスの妨害を示す
シアン化水素用検知管
シアン化水素は試薬と反応して中間生成物を生成し、指示薬は桃色を呈する
干渉ガス(+)塩化水素、硝酸、二酸化硫黄、二酸化窒素、フッ化水素、硫化水素
干渉ガス(−)アンモニア
問11高速液体クロマトグラフ分析法による環境空気中の1,1-ジメチルヒドラジンの測定法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 捕集には硫酸含浸ろ紙を用いる。
2 捕集後は純水で抽出し、遠心分離した上澄み液を分析に用いる。
3 フルフラールで誘導体化して、分析する。
4 順相分配クロマトグラフ法を用いて分離する。
5 検出には、紫外部の吸収を用いる。
解答
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(4)
【解説】
作業環境測定士 特定化学物質 まとめ③ 高速液体クロマトグラム(HPLC) 参照
(4)移動相はアセトニトリル/純水=20/80 を使用するので逆相カラムということになるセトニトリル/純水=20/80 を使用するので逆相カラムである。
シルカゲル担体に,オクタデシルシリル基(OctaDecylSilyl= ODS基,C18基)を化学結合した充填剤が詰められた逆相クロマトグラフィーで用いられるカラムを使用する。
問12 1-(2-ピリジル)ピペラジンとの反応を利用して、高速液体クロマトグラフ分析法で測定する物質は、次のうちどれか。
1 3 ,3 ‘ -ジクロロ- 4 ,4 ‘ -ジアミノジフェニルメタン(MOCA)
2 o -トルイジン
3 ジメチル- 2,2- ジクロロビニルホスフェイト(DDVP)
4 トルエンジイソシアネート
5 β- プロピオラクトン
解答
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(4)
【解説】
(4)以外はいずれもGC
トルエンジイソシアネート(試験ではこちらを使うようだが、トリレンジイソシアネートと表記する本もある)
・液体捕集法では、酢酸と塩酸の混合液中に捕集し、加水分解によって生成する芳香族アミンをHPLCで定量
・固体捕集法では1-(2-ピリジル)ピペラジン(2-TP)含浸ろ紙に捕集後、生じた誘導体を抽出しHPLCで定量
問13次の化合物Ⓐについて、その構造式Ⓑが誤っているものはどれか。
解答
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(3)
【解説】
問14o -フタロジニトリルの構造に関する次の記述の㋑から㋩までのに入る語句の組合せとして、適切なものは下のうちどれか。
「o -フタロジニトリルは芳香環である㋑に、2つの㋺が結合した構造となっている。2つの㋺は芳香環の㋩に結合している。」
解答
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(1)
【解説】
これはサービス問題ですね。
㋩は隣あった位置はオルト体、対角線上の位置はパラ体です。メタ体は一個飛ばしです。念のため。
問151気圧におけるエチレンイミン及びエチレンオキシドの物性に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 エチレンイミンの方が、エチレンオキシドより融点が高い。
2 エチレンイミンの分子量の方が、エチレンオキシドの分子量より小さい。
3 20 ℃ において、エチレンイミンの蒸気圧の方が、エチレンオキシドの蒸気圧より小さい。
4 両物質とも25 ℃ で液体である。
5 両物質とも、沸点は水の沸点より低い。
解答
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(4)
【解説】
これはエチレンイミンが25℃では液体。エチレンオキシドが25℃では気体という知識問題。それを知っているだけで(1)(3)(4)の正誤が判る。
(2)は構造式がきちんと理解してないといけない。(5)はエチレンイミンの沸点を知らないと解けないが、分子式からそんなに高沸点ではないかな?という予想は立つ。
問16特定化学物質の分析に使用する標準原液のうち、分析のつど調製して標定する必要があるものは次のうちどれか。
1 次亜塩素酸ナトリウム溶液
2 トルエンジイソシアネート溶液
3 フッ化ナトリウム溶液
4 ペンタクロロフェノール溶液
5 α- ナフチルアミン溶液
解答
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(1)
【解説】
次亜塩素酸ナトリウム溶液は、時間経過により塩素の濃度低下が大きい。したがって、濃度の標定および標準液の調整はできるだけ速やかに行う必要がある。
問17拡散セルを用いた標準ガスの調製に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 拡散セルは、一定の蒸気圧を有する液体から標準ガスを調製する際に用いる。
2 拡散速度は、拡散セルを入れた液体の質量の減少から算出できる。
3 拡散速度は、拡散セルを保持する恒温槽の温度が高いと増加する。
4 拡散速度は、拡散チューブの内径の2乗に比例する。
5 拡散速度は、拡散チューブの有効長に比例する。
解答
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(5)
【解説】
作業環境測定士 特定化学物質 まとめ③ 拡散セルとは? 参照
(4)「流出速度は、拡散チューブの断面積に比例する」 は 「拡散速度は、拡散チューブの内径の2乗に比例する。」と同義である・
(5)流出速度は、拡散チューブの長さに反比例する。
問18ガスクロマトグラフ分析法により、管理濃度の1/10に相当する標準試料ガスを5回繰り返し分析し、平均値c ppm、標準偏差σ ppm の結果を得た。この測定法の検出下限濃度に相当する濃度として、適切なものは次のうちどれか。
1 σ ppm
2 3σ ppm
3 10σ ppm
4 c -σ ppm
5 c -3σ ppm
解答
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(2)
【解説】
作業環境測定士 特定化学物質 まとめ② ガスクロマトグラム定量下限の求め方 参照
今回は標準偏差σなので3倍して3σ
① 標準液を調整し、検量線を作成する
② 管理濃度の1/10の濃度に相当する標準試料ガス又は測定対象物質を各分析法に適した捕集・前処理を行う
③ その標準試料を繰り返し5回以上分析する
④ 分析結果の標準偏差(3σ)の3倍を検出下限、10倍(10σ)を定量下限とする
問19次の測定対象物質のうち、ろ過捕集法と固体捕集法を組合せた相補型ろ過捕集法により捕集するものはどれか。
1 エチレンイミン
2 アクリルアミド
3 o -トルイジン
4 フッ化水素
5 ペンタクロロフェノール
解答
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(2)
【解説】
(2)粒子および蒸気を、グラスファイバー濾紙と活性炭フェルトを装着したサンプラーにより吸引捕集しメタノールで抽出してGC-MSで定量する。
問20液体捕集法を用いて環境空気試料を捕集する際の、必要最小吸引空気量Q(L)を求める次の式中のA、B、Cが表すものの組合せとして、正しいものは下のうちどれか。
ただし、単位は次のとおりとする。
解答
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(3)
【解説】
必要吸引空気量Qは下記の式で求められる
Q ≧ (S × q)/ a
Q:必要な吸引空気量(L)
S:最終試料液に対する定量可能な下限濃度(μg/mL)
q:最終試料液の総量(mL)
a:管理濃度の1/10の値
少なくとも、掛け合わせると単位が(L)にならないと正解にはなりません。(3)か(5)しか単位が(L)にならないと思います。